【書評】タイトルに偽りあり! ―フラノマルシェの奇跡

杉並区の図書館で利用者登録したついでに借りてきた本なんだけど……これがめちゃめちゃおもしろかった!
まず、文章が読みやすい。
おちゃらけるところと、まじめに解説するところのバランスが絶妙。

さて。
この本は「フラノマルシェ」開設までの道のりを描いたノンフィクション……なんだけど。
こういう本って、「成功した自慢話」になりがち。なんだけど、そうなってないのがすばらしい。
これは、文章力がすごいのもあるけど、それ以上に「自慢話をしたかった」わけではないことが大きいんだと思う。
なんでそうならなかったのか。
フラノマルシェの立地は、幹線国道と駅前商店街の交点。商業施設の立地としては100点。
もともと病院があったところで、病院が移転した跡地。
普通なら「そこになにを作るか」からはじまるんだけど、富良野の人たちは違った。
最初から「そこをどう利用するか」という視点だったのだ。
「中心市街地を活性化させたい」というのがゴールであって、「跡地になにかつくる」がゴールではなかった……それが最大の理由だと感じた。
「道の駅にすればいいじゃん」というスタンスだったアドバイザーより、「跡地施設を起爆剤にする」という街の人達の方が、一歩先を行ってたわけだ。
そしてそれが、「キーパーソンが、先進的な人だったから」ではないのも、大きなポイントだと思う。
「お役所まかせにせず、自分たちの手でまちづくり」をするというDNAが、富良野にはあったというのも大きいと感じた。
フラノマルシェ成功の最大の要因は、「日頃から、まちづくりについて議論を交わしていた」ことであり、それゆえ「跡地になにかをつくることがゴールにならなかった」ことなのではないか、と。
そういう意味で、この本の「フラノマルシェの奇跡」は、タイトルに偽りありだ。
だって、奇跡じゃなくて「必然」だもの。

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