あとがき

Avenue.
あとがき

 きっかけは「電子書籍のラインナップを充実させなきゃいけない」ということでした。安定した販売数が見込めるのならば、無理してラインナップを増やすこともないのですが、ウチみたいな弱小は、点数を増やして小さな売上を積み上げていかなきゃいけないわけです。
 あれやこれやと努力はしていたのですが、ついにネタがつき、「手っ取り早く電子書籍化できるものはないか?」と探し始めたわけです。とはいえ、まともな本を出していたのは十年以上前ですし、版権の問題をクリアしたとしても、とうてい売れるとは思えません。だって……スマホでインターネットが使い放題の時代に、パソコン通信の本なんて、読む人いないでしょ(笑)
 頭を抱えているときに思い出したのが、「Avenue」という小説でした。
 実は、二十歳頃専門学校に在籍してまして。いや、在籍してただけで、ほとんど通ってなかったんですけれど。で、その学校では毎年作品コンクールをやってまして。気まぐれて出品したら、入賞しちゃったんですよ(ちなみに、小説ではなく広告部門)。
 そのときに、数万円の賞金をもらいまして、そのときになにをとち狂ったのか、
「これで個人誌出せるんじゃね?」
 なんて思いついてしまい、どうしたことか作品ができあがり、発行するところまでこぎつけたのですが……売るアテがなかったのです。我ながらアホだなぁ。
 で、これならまだ世に出てないわけだし、ある程度の分量はあるし、電子書籍化にうってつけと思い、引っ張り出してみたわけですが。
 これが、実にひどかった!
 まったくおもしろくないんですよ、文章が。物語のテーマとか、短編連作っぽい構成とか、アンニュイな雰囲気の章タイトルとか、案内図風な目次とか、全体の雰囲気はとても気に入っているんです、いまでも。ただ、決定的に文章がつまらない。自分でも読み返すのがつらいくらいに。
 相当煮詰まってたんでしょうねぇ、二十歳の頃のワタシ。
 ここで考えられる選択肢はふたつ。恥をしのんで、多少の加筆修正をして出すか。それとも、キャラクターなどそのままに、全面改稿するか。
文章を読んだ限りでは、少々の修正でどうにかなるようにも思えませんでしたし、一度できあがったキャラクターを使って別の話を同じタイトルでつくるのもなんか違うよなぁ……というところで、行き詰まってしまったのです。
 そんな折、近くのターミナル駅で駅前再開発がはじまりまして。その様子を眺めながら、ふと思ったのです。「Avenueのキャラクター達は、二十年経ったいま、どうしているんだろうか?」と。
 あの店はあんなことになったり、あの人はこんなことになったりして……と、想像がふくらんできまして。「コレだ!」と思いましたね。正直、「キターーー!!」って感じです。
 そうしてできあがったのが、この「Avenue.」です。
「ん? タイトル同じじゃない?」
 とお思いかもしれませんが。新しい方は.(ピリオド)がついてるのです。点ひとつかもしれませんが、たったそれだけでも「違う」ということが重要です。言い訳さえあれば、それでいいんです(笑)

 気がつけば私も「不惑」を越えました。いや、実際はもう少しで「四捨五入すれば五十路」になってしまうのですけれど、まったく月日の経つのは速いものです。気持ちの上では、「ついこの間三十を超えた」くらいなんだけどなー。
 そんなわけで、「Avenue」(古いほうね)も、自分の中では「ついこの間の作品」です。実際には、二十年経ってるんですけど。
 でもまぁ、こうして決着をつけられて、ほっとしています。「ものがたり歳時記」を含めて、「黒歴史の廃品回収」をやり遂げた感じです。
 これで作家稼業(実際には作家のまねごとかもだけど)は、これで終了……のつもりだったのですが、実は新たなアイディアで出てきちゃったんですよねぇ。
 果たして日の目を見ることはあるのか……なんかまた、二十年モノのプロジェクトになっちゃったりして。――あ。そしたらもう還暦か(笑)
 こうなったら、寿命とのチキンレースだね。やんなっちゃうなぁ、まったく。

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